よくある話だ。

流行病による母の死で父が狂った。

息子に母をなぞらせ、少しでも外れた行動があれば怒り狂う父は、病で死んだのは息子だと思い込んでいた。

父の中で自分はとうに亡霊だった。

しかし子供は育つ。

明確な性差が体に現れたその日、限界を悟った。

そしてとうに破綻した暮らしに、父に、自らとどめを刺し、全てを火に焚べた。

ここからだろうか、血にまみれた人生が始まったのは。

父親を殺して逃げた先で、金持ちに飼われた。

ずっと母をなぞっていたせいで抜けきらない女性的な仕草によって目をつけられた様に思う。

そしてその金持ちはあっさり死んだ。

盛られた毒を口にして。

自分も同じものを食べた。

初めは苦しみ、のたうちまわったが、フッと、それまでの苦痛が嘘の様に消えてなくなった。

生き残ってしまった。

当然の様に疑われ、毒殺犯として殺されそうになったが、毒の耐性を見出した暗殺者によって救われた。